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第三の広告― エゴフーガリストの生み出す力と育てる力 ― /上原 拓真(#co_article010)
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Abstract
本論の目的は、広告業界にはびこる二項対立とはなにか、広告人たちが歩むべき第三の道はなにか明らかにすることである。広告の実務家が抱えている二項対立とは、マーケティングの概念が50年前に日本に輸入されてから、第一に利益志向な企業の視点、第二に顧客志向な生活者の視点に分かれ続けている。このふたつの視点を更新するために、新たな第三の道を指し示したい。
企業と生活者のあいだにあるのは商品だが、商品は企業が製造したモノでありつつ、生活者が消費するモノであるため、両者のどちらかのエゴに与してしまう浮遊した存在だ。そこでエゴフーガル(個我から遠く離れるという意味)という概念を参照しながら、一切のエゴを取り除いた「エゴフーガルなモノ」としての商品から広告を発想することの重要性を指摘する。エゴフーガルなモノから発想された広告は、企業にも生活者にも大きな満足感を与えてくれる表現になる。
たとえば2008年度のカンヌ広告祭でグランプリを受賞したキャドバリー「デイリーミルク」のCMは、商品に内在するエゴから脱却することを狙った表現である。その意識はデイリーミルクの有名なタグライン“A glass and a half full of milk(コップ一杯半の生乳)”をあえて“a GLASS and a HALF FULL PRODUCTIONS(コップ一杯半のエンターテイメントを提供する会社)”というコピーに置き換えた点によく現れている。まるでそのPRODUCTIONSが広告を作っているかのように演出することで、デイリーミルクをエゴフーガルなモノとして生まれ変わらせ、あらゆる個我を捨て去ろうと挑戦したのだ。
この事例では生活者がパロディ作品を増産して大きな話題を呼んだように、エゴフーガルなモノから発想された広告には、生活者の創造力を刺激する「生み出す力」がある。生み出す力を持った広告は、YouTubeを始めとしたソーシャルメディアで二次創作が拡散していく。またその広告の裏側には、文化的慣習に影響を与えて人間の価値観に啓発していく「育てる力」がある。そして時代はこれからの広告人に対して、ブランドを「創り出す」よりも、エゴのない「生み出す力」「育てる力」を提供してくれることを強く求めている。
<論考内で引用される動画>
プロフィール
上原 拓真(うえはら たくま)
一九八一年 沖縄県生まれ。武蔵野美術大学卒業。日本経済広告社 コミュニケーションデザイン局 戦略プランナー。日経広告研究所 客員研究員。専門はマーケティング。現代美術史。主な論文に「CC:これからの広告のカタチ」。日本広告業協会 第三十四回 懸賞論文 新人賞。
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